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目次
1. グルメサイト業界の構造分析
カカクコム(2371)が展開する食べログの事業戦略は何が凄いのか?前編
「食べログ」事業が置かれているグルメサイト業界の構造を、FiveForcesの観点より確認します。「食べログ」の強みを踏まえ業界の構造を確認し、同業他社に比べ圧倒的に高い営業利益率や月間利用者数の増加の要因について考察します。
カカクコム(2371)の企業情報
ファイブフォース分析とは、外部環境分析のうち「事業環境」の分析を行うためのフレームワークです。マイケル・E・ポーター教授は、経営の戦略を考えるうえで、業界の競争要因を把握することが重要であると述べています。その競争要因に以下の5つの競争要因(要するにファイブフォース)があり、これが業界の収益性を決めることになるという研究結果が出ています。
2. グルメサイト業界内の競合他社
グルメサイト業界は売上収益や登録店舗の数で4強による寡占状態であると言えます。その4強とは、「食べログ」「ぐるなび」「ホットペッパー」「Retty」です。「ぐるなび」はグルメサイト4強の中で最古参の1996年に業界参入しました。月間利用者数は2018年12月度で6,100万人に上り、売上収益は業界最大の32,728百万円です。「ホットペッパー」はリクルートホールディングス傘下の企業で、お得なクーポンの提供や女性ユーザが多い点が特徴です。「Retty」は実名制の口コミが特徴で、月間利用者数は3,500万人を超えます。4強の中では圧倒的に歴史が浅いにも関わらず、業界内で独自の地位を確立しています。
最後に「食べログ」の月間利用者数は業界最大の1億1,917万人を誇り、売上収益は24,353百万円です。
「食べログ」が同業他社に比べ圧倒的に優れている点は、営業利益率の高さおよび月間利用者の多さです。「食べログ」の営業利益率は約40%※と、「ぐるなび」の3.7%や営業損失を計上している「Retty」と比較しても圧倒的に高いのです。「食べログ」の営業利益が高い理由は、図にありグルメサイト業界の概要と動向で前述した三つ目の収益源に加え、「④利用者から受け取る有料会員費」という四つ目の収益源があるからと考えられます。また、口コミ投稿および点数制度という強みは、飲食店の来店予定者のサイト訪問に繋がり、月間利用者の増加に寄与しています。
※「食べログ」事業単体の営業利益が不明であるが、「価格.com」の営業利益率と遜色ないと仮定し、約40%とする。
3. 食べログ事業の代替品
昨今、インスタ映えを狙いインスタグラムのハッシュタグより飲食店を検索する女性が増えています。また、GoogleもGoogleMapによる飲食店検索に力を入れ始めました。これらの代替品はグルメサイト業界にとって脅威であり、利用者流出の可能性があります。しかし、前編で述べた通り、「食べログ」の強みは代替困難であるため、競合他社に比べて利用者が流れにくいと考えられます。
4. 食べログ事業の買い手
グルメサイト事業の買い手は飲食店です。飲食店は有料で店舗情報を掲載するグルメサイトを選ぶ際、サイトの送客力を重視すると考えられます。サイトの送客力は月間利用者数と直結するため、月間利用者数が業界最大手の「食べログ」は飲食店に対し大きな交渉力を持ちます。この交渉力は収益源の一つである店舗有料掲載費の増加に繋がります。
5. 食べログ事業の供給業者
グルメサイト事業の供給業者は個人の利用者です。グルメサイト業界において個人の利用者は飲食店という買い手に対する顧客の供給元であるため、利用者が無料で全サービスを利用できるサイトが大半であります。しかし「食べログ」の口コミ投稿および点数制度は利用者にとって大きな経済価値を有するため、利用者から受け取る有料会員費という新たな収益源が発生し、競合他社に比べ高い利益率を維持できるのです。有料会員になると点数によるランキング検索などが行えるようになるため、口コミおよび点数を重視する利用者は喜んでお金を払うことになります。
6. 結論
株式会社カカクコムの「食べログ」事業は、口コミ投稿および点数制度という強みが他社との差別化に繋がり、高い営業利益率を維持しています。しかし、昨今は同事業の口コミ投稿および点数制度に飲食店や利用者が不信感を持ち始めているため、同事業がいつまで強みを維持できるかに注目したいです。
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