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目次
1. 本記事の目的
本記事では、最近何かと世間を騒がせているコロワイド(7616)による、大戸屋ホールディングス(2705)のTOBによる子会社化について、企業買収に絶対不可欠な「シナジー」という観点から本買収の妥当性を評価します。
今回記事は前編です。
まず初めに、シナジーとTOBの説明を行い、本TOBの概略を説明します。
果たして、本買収はコロワイドおよび大戸屋にとって良い買収といえるのでしょうか?
コロワイド(7616)の企業情報
大戸屋(2705)の企業情報
2. シナジーとは
シナジーとは、統合会社の将来CFが買収前の両社の将来CFを上回ることを言います。要するに、1+1=3みたいな話です。
買収は、一般的にシナジーを見込まれて行われます。
たまに、「この買収価格はさすがに高いんじゃないか?」と思われる買収は、このシナジーを見込まれて行われています。(例:サントリーのビーム社買収)
図にある内在価値とは、将来キャッシュフローから企業本来価値を算出したものです。詳しい解説を行うと長くなるので、本記事では説明を割愛します。
3. TOBとは
TOBとは株式公開買付けのことで、不特定かつ多数の者に対して買付価格や期間などの公告等を通じて、その保有する株券等を売ってくれるように勧誘し、取引所外でそれらの株券等を買い付けることをいいます。
4. コロワイドの大戸屋買収の概要
2020年7月9日に、居酒屋「甘太郎」や「北海道」等でおなじみのコロワイドが、定食でおなじみの「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングスに対してTOBを実施すると発表しました。これは、子会社化を目的としています。
TOBにより株式32.16%を約72億円で追加取得して所有割合を51.32%に高め、経営権を掌握する。大戸屋HDのジャスダック上場は維持します。
気になる買付価格は大戸屋HD株式1株につき3081円となります。これは、TOB公表前日の一株当たり終値2,113円に45.81%のプレミアムを加えた値となります。買付予定数の上限は2,333万株(所有割合32.16%)で、下限は187万2392株(同25.84%)に設定しました。
もし上限まで買い付けられれば、所有割合は現行の所有割合である19.16%と合わせて過半の50%超に達することになります。買付期間は7月10日~8月25日であり決済開始日は9月1日となります。
コロワイドは昨年10月、大戸屋HDの創業家から株式を取得して筆頭株主となりました。これを受け、コロワイドは大戸屋HDに食材の仕込み・加工を工場で一括集中するセントラルキッチン方式の導入などのコスト削減策を提案しましたが、店内調理を売り物としてきた大戸屋HDは反発しました。2020年6月末の株主総会では大戸屋HDの経営陣の刷新を求める株主提案をしましたが、結果はコロワイドの株主提案が否決され、大戸屋HD側に軍配が上がりました。
後編では、本買収にシナジーは発生するのかについて、ビジネスモデルから考えていきます。後編の焦点は、一株当たり終値2,113円に45.81%ものプレミアムを付けた本買収が、シナジーの発生という観点から妥当と言えるのかを考えていきます。
コロワイド(7616)の大戸屋(2705)買収に、シナジーは発生するのか?後編
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