酒税法改正により、ビール企業各社はどのように戦略が変わるか?

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1. 本記事の目的

本記事では、最近のビールのトレンドと2020年の10月から段階的に行われるビール類における酒税法の改正について説明した後、大手ビール会社が今後どのような戦略をとるか予想します。

結論として、酒税法の改正により日本のビールメーカーは、新ジャンルのビールや発泡酒を製造しなくなる可能性があります。

【参考】酒税法改正のあらまし

2. 現在の日本のビール市場

糖質オフブームや人々の味覚の変化により、昨今は若者を中心としたビール離れが叫ばれています。国税庁が毎年の酒税収入等を開示している「酒のしおり」によると、ビール市場は年々縮小傾向にあり、1992年をピークに2017年の製成量は半分以下となっています。

これは、バブル経済崩壊の影響による消費者の節約志向等により、ビールより安い「発泡酒」や「第三のビール」、「チューハイ」の販売数が伸長したことが原因の一つと見られます。

もう一つの原因は、若い世代を中心とした消費者の味覚が変化し、甘いお酒が好まれるようになったことが挙げられます。アサヒビール(2502)キリンビール(2503)、サントリービール、サッポロビール(2501)、オリオンビールの大手ビール会社五社の主力商品は「スーパードライ」や「一番搾り」を代表とするラガータイプです。

ラガータイプとは、下面発酵酵母を使用し低温発酵するタイプであり、心地よい苦みがありすっきりとした喉越しと後味が特徴です。そのため、若い世代を中心とした消費者のビール離れに拍車をかけていると見られます。

3. クラフトビール市場の高まり

一方、国税庁が発表している資料によると、クラフトビール市場は年々出荷量を伸ばしています。

アメリカのブルワーズ・アソシエーションによると、クラフトビールとは「①小規模」「②独立」「③伝統的」の3つの条件を満たすものと定義しています。要するに、大手ビール会社五社が作ったビールはクラフトビールと呼びません。

なぜ、日本でこれほどクラフトビールの出荷量が増えているのでしょうか。それは、 現代の消費者の味覚に合っているという点が主な要因と考えられます。

日本のクラウトビールはエールタイプのものが多いです。エールタイプとは、上面発酵酵母を使用し発酵するタイプのことを言います。フルーティーかつ豊かな香り、個性的で奥深い味わいを特徴とする商品が多いです。

クラフトビールの市場規模はビール市場全体の1%程度と、まだまだ小さいのが現状です。しかし、キリンビールが「クラフトビール戦略」を策定する等、大手を含むビール業界全体で注目が高まっている市場であることは間違いありません。

4. 酒税法改正による影響

まず、現行のビール類における酒税法の内容を説明します。2020/9月までのビール類の種類ごとの酒税は以下の図の通りです。まず、ビールの酒税は350mlで77円となっています。大体スーパードライが一本200円から300円で買えますが、この中の約3~4割は、なんと税金なのです。
恐ろしいですね。

それに対して、最近人気の「本麒麟」を代表とする新ジャンルのビールですが、酒税は350mlで28円となっています。3倍も差がありますね。スーパーで100円以下で新ジャンルのビールが買えますが、これは酒税法が安いことが影響しているようです。

次に2020/10~2023/9を見てみると、新ジャンルの酒税が一気に11円も上がることがわかります。これは大増税であり、もう100円以下の新ジャンルビールは買えなくなるかもしれません。

続いて2023/10~2026/9の酒税法改正では、ビールにかかる酒税はさらに6円も下がることになります。当初の77円から13円も下がるため、ビールはコンビニやスーパーで少し身近な存在になるかもしれません。

最後に2026/10~の酒税法改正では、ビールにかかる酒税はさらに9円も下がることになります。その他のビール類の酒税も全て55円となり、なんと新ジャンルは当初から27円も高くなります。

5. 各社の戦略予想

全てのビール類の酒税が全て55円の状況では、新ジャンルや発泡酒を製造しても、安売りができないため、顧客はビールに流れる可能性が高くなります。そのため、ビール大手の各社は新ジャンルや発泡酒を製造するインセンティブが低くなります。

加えて、クラフトビール市場の高まりがあります。よって、各社はさらにクラフトビールや、一番搾りやプレミアムモルツ等のビールの製造やマーケティングに力を割くことが考えられます。

実際、オリオンビールは、エールビールかつプレミアムビールである「75BEER」を沖縄限定で発売しています。実はオリオンビールは、あの野村HD(8604)や投資ファンドのカーライルに買収されています。この「75BEER」の発売は、今まで説明してきたトレンドや酒税法の改正を見越し、オリオンビールの価値を上げるための製品を世に出したいという、買収側の思惑が絡んでいると思われます。

もしかしたら、新ジャンルのビールや発泡酒は酒税法の改正により、どのメーカーも製造しなくなるかもしれませんね。
個人的には、ビールさえあればいいです。

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プロフィール

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このサイトを運営しているhk5です。
1991年生まれ、東京生まれ東京育ち。
都内の某私立大学を経て、某シンクタンクの支社決算業務の主担当として従事。 3年半勤務後、某コンサルテインングファームでAIプロジェクトの企画書作成、某金融機関のチャットシステム実装のPMO、某政府系組織のシステム企画の要件定義等を経験する。
現在、都内の某国立大学院で経営学を学習中。加えて、大学院と提携しているコンサルティングファームと協業し、将来の公立病院の経営戦略をテーマにレポートを執筆中。
また、中小企業診断士として、週1~4程度の頻度でベンチャー企業の業務を手伝い、新事業企画の立案や収支シュミレーションの作成等、パワーポイントを中心とした資料作成や市の融資相談員を行っている。
趣味は星野リゾートと離島巡り。日本中回りたいと思っている。
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