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目次
1. 本記事の目的
本記事では、最近の事例を元に、将来の駅ターミナルの在り方について考えたものです。
従来型のターミナルは、主力事業のターミナル収入よりターミナル管理費の方が多く、赤字になりやすい資産体質です。加えて、自家用車が漸減する中で、収入を駐車場収入に頼り過ぎている側面もあります。
そのため、「1.宅配ロッカーの配置や、商品の受取や試着、返品が行えるサービスを提供することで、駅はECコマースと顧客のタッチポイントとなる」「2.駅との接続が容易な自転車等駐車場を設置することで、まとまった収入を得られることが考えられる」「3.駅は発電のポテンシャルを多く抱える施設であるため、今後普及が見込まれるEV給電スタンドで利用者に売電することで、ある程度の収入を見込むことができる」「4.配車サービスや配送サービスでの使用を見込む自律運転車の導入には、専用のメンテナンスセンターが必要であるため、民間業者に運営を任せることで、安定した賃料収入および地域の雇用創出による駅周辺の活性化が見込まれる」等の施策が必要となります。
2. 従来型ターミナルの費用
上記は、従来型の駅ターミナルの収支項目の例である。二つ特徴があり、一つ目は、主力事業のターミナル収入よりターミナル管理費の方が多く、赤字になりやすい資産体質なことです。二つ目は、自家用車が漸減する中で、収入を駐車場収入に頼り過ぎていることです。
3. 次世代ターミナルの収益源検討①:Eコマースと顧客のタッチポイント
宅配ロッカーの設置
PUDOステーションは、「Packcity Japan」が運営する、提携した宅配事業者の荷物をロッカーで受け取れるサービスです。メルカリやヤマト運輸が提携しており、宅配便の再配達依頼を劇的に減らす可能性を持ちます。利用可能時間は24時間で、人の手を介さない荷物の発送が可能になることもメリットとするため、アフターコロナの収益元として最適であると考えられます。
ECコマースとのさらなる融合
「Doddle」は、各オンライン・ショッピング・サイトで購入した商品の受取サービス(最初の3回は無料。以降1件1.95ポンド)のほか、国内への発送(6.49ポンド~)、商品の返品(Asosなどの提携先なら無料)も受付するイギリスのサービスです。一部の店舗では試着室も完備し、受取、試着、返品が1度に行えます。特にECコマース(特にファッション系)との融和性が高いとみられます。
4. 次世代ターミナルの収益源検討②:ソフトモビリティ化への対応
コロナによるソフトモビリティ化の加速
新型コロナウイルスの影響による活動制限措置や感染予防のため、人々の移動手段が、公共交通機関や自動車から自転車や徒歩にシフトする「ソフトモビリティ」の動きが、世界で加速しています。日本でも、100%電気で走行する折り畳み立ち乗りEVバイクである「ブレイズ スマートEV」「ブレイズ EVスクーター」が、楽天市場で売れているようです。そのため今後、駅という場所は公共交通機関とソフトモビリティを繋ぐ「モビリティハブ」であることを意識し、設備の設置等を行う必要があります。
ソフトモビリティの駐車場(駐輪場)収入
内閣府の調査によると、自転車等駐車場の利用率は、駅からの距離が近ければ近いほど利用率が高いです。しかし現状では、駅から近い自転車等駐車場(100m以内)の収容能力は全体の60%に満たないのです。そのため、ソフトモビリティ化が加速する中で重要な点は、駅(特に改札)との接続が容易な自転車等駐車場を設置することで、まとまった収入を得られることです。また、それにより、放置自転車現象による駅周辺の景観の改善も多少見込まれます。
5. 次世代ターミナルの収益源検討③:電気スタンドによる売電収益
駅の豊富な発電ポテンシャル
駅は、面積を活かした太陽光発電や、床発電システム(古い)等、発電のポテンシャルを多く抱える施設です。AGCは、同社の太陽光発電ガラス「サンジュール」がJR東日本の新駅・高輪ゲートウェイ駅に採用されたと発表しました。「サンジュール」は、合わせガラスの間に太陽電池セル(発電素子)を封入し、採光性と発電機能を併せ持った建材一体型太陽光発電パネルです。発電した電気は自家消費しているため、コスト削減につながる一方、収入の増加は見込めません。
電気スタンド設置による売電収入
世界のEVの新車販売台数は、欧州や中国の自動車メーカーの製品投入がけん引して2021年にHVを上回るとしています。日本では、自動車の価格等の問題により、それほどEVが普及していません。しかし、量産化が進み価格が下がると、環境意識の高まり等より普及する可能性が高いのです。電気自動車や前ページで紹介した折り畳み立ち乗りEVバイクの普及を見込み、駅で発電もしくは卸売市場から電気を調達し、給電スタンドで利用者に売電することで、ある程度の収入を見込むことができます。
6. 次世代ターミナルの収益源検討④:メンテンナンスセンターの賃料収入
自動運転車の導入に必要なインフラ
自律運転車の導入には、サービスの提供と顧客に課金を行うためのために大規模なインフラ設備が必要となります。例えば、渋滞のマネジメントやルーティング、価格決定システムを備えたスマートアプリケーションズ(信号機のようなもの)等の設置が挙げられます。特に重要なのが、需給的に不要な自動運転車を格納しておく場所やセンサーの点検、部品の交換等を行うサービスセンターの設置です。これは、自家用車の減少等不要になった駐車場等の場所の転用が考えられます。
メンテナンスセンターの設置
Waymoは、アリゾナ州フェニックスの大都市圏に自動運転車のメンテナンスセンターを開設しました。そのメンテンナンスセンターは、数百人規模の人々を雇うことを計画しており、地区の新しい雇用を創出します。ほとんどの自動運転車が配車サービスや配送サービスでの使用が見込まれるため、整備を行うメンテナンスセンターは非常に重要となります。民間業者にセンターの運営を任せることで、安定した賃料収入および地域の雇用創出による駅周辺の活性化が見込まれます。
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