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目次
1. 本記事の目的
本記事では、不動産投資法人(星野リゾートREIT)を運営する星野リゾートのサスティナビリティ戦略について解説します。
現在、国内外問わず企業ではサスティナビリティ戦略の重要性が叫ばれています。サスティナビリティは、「持続可能性」を意味する言葉で、SDGsという言葉で耳にした方も多いのではないでしょうか。
SDGsとは、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)のことで、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
2. 星野リゾートのサスティナビリティポリシー
星野リゾートREITでは、具体的な目標として3つの柱を作成しています。
・気候変動や大規模災害の低減を目的に保有施設の「環境建築化」を目指し、新築・改築・修繕の際には、エネルギー消費や温室効果ガス(GHG)排出、水消費、廃棄物量の削減等の環境負荷低減の実施・検討いたします。また、併せて再生可能エネルギーの導入検討も行い、レジリエンスの向上に努めます。
・「廃棄プラスチック」にみられる海洋マイクロプラスチックや陸上でのペットボトルなど使用を減らすため、プラスチックを可能な限り使用しないように努めます。こうした活動を通じてお客様にはライフスタイルへの良い影響を与えられる関係を、サプライヤーとは協働できる関係を構築していきたいと考えます。また、全てのオペレーターとはプラスチックに限らず廃棄物管理全般に関する協働やグリーンリース契約の締結を進めます。
・「観光と地域」は切ってもきれない間柄ですが、地域の特性を大切にしていきながらともに経済を回していくことを考えていきたいと思います。それには、業務を促進していく役職員の健康の増進のための定期健診をはじめとしたウェルネスも配慮した職場環境も整備していくことが必要です。
以上の内容を、資産運用業務を受託する星野リゾート・アセットマネジメントを中心に、投資運用委員会、コンプライアンス委員会、取締役会等の意志決定機構で構築し、業務におけるリスク管理・コンプライアンスを徹底、コーポレート・ガバナンスの継続的な改善を行いつつ、全力で努めているようです。
また、2005年開業したラグジュアリーリゾート「星のや軽井沢」では、自然への負荷を最小限に抑えるため、消費エネルギーを自給自足(EIMY)する活動を始めました。
3. EIMYとは
EIMYとは、「Energy In My Yard」の略語で、星のや軽井沢を支えるエネルギーシステムのことです。水力・地熱からの発電、温泉排湯の暖房利用、エネルギー保存のため工夫した建築、バイオマス利用リサイクルなどを進め、約70%のエネルギーの自給自足を達成しています。また動植物のレンジャーチームである「ピッキオ」が軽井沢の森の植物や生物と、人々の暮らしの境界線を作って生物多様性と生息地を護る活動をしています。
4. グリーンビルディング認証の取得
星野リゾートでは、保有物件のグリーンビルディング認証の取得にも努めています。「グリーンビルディング」とは、将来世代にわたり持続可能な環境と生活の質(QOL: Quality of Life)の向上の実現に寄与するべく、立地選定から設計・建設・運用・保守・改修・解体といったライフサイクル全体を通じて資源効率が高く、環境的・社会的な責任を踏まえた、建築や地域コミュニティの構築と運用を目指す取組です。
世界にはグリーンビルディングに関する様々な認証制度や評価指標があります。
星野リゾートの施設がいくつか取得している認証であるGRESB(グレスビー)は、不動産会社・ファンドに対してESG配慮を評価する指標です。グリーンビルディングに関する認証の取得は、このGRESBの評価項目の一つに含まれています。評価は4段階(Sランク:★★★★★~B ランク:★★)で表示されるようです。
星野リゾートREITの物件では8施設がグリーンビルディング認証を獲得しており、その内5施設が星野ブランドの施設となります。
星のや軽井沢(評価対象:ハルニレテラス、★★★★★)
特に高く評価された項目:エネルギー/温暖化ガス 、屋内環境、 生物多様性/敷地
環境性能の特徴:かつて湯川沿いのハルニレの大木が立ち並ぶ美しい林を商業施設にする際、考えたのは木々と人間活動の共存です。 ホリゾンタルなレイヤーの木製テラスを使うことで、木々の根を 痛めつけず土壌を柔らかい状態に保てるようにして元々の植生を活かし、且つ人が遊歩道で木や川に近づけるように設計したことが評価されました。自然のままの美しい湯川を守るために、敢えて手を加えないという設計思想をもち、現在は買い物客、リラクゼーションを求める人々の広場になっています。
界加賀(評価対象:新館、★★★★★)