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目次
1. 本記事の目的
本記事では、携帯電話や家電等の金属含有スクラップから、金・銀・パラジウム・プラチナ等の貴金属・希少金属をリサイクルし、販売する貴金属事業を行うアサヒHD(5857)と松田産業(7456)の株式を分析します。
結論として、新型コロナウイルスの流行は、金が「安全資産」としての側面から買われやすくなる要因となります。そのため、都市鉱山より資源をリサイクルするアサヒHDと松田産業の業績は、今後も伸びていくと推測されます。また、松田産業よりアサヒHDの株式を推奨する理由は、貴金属に関連する事業の売上に占める割合が松田産業よりアサヒHDの方が多いことと、株主還元の違いです。
2. 都市鉱山とは?
「都市鉱山」という言葉は、東京都が以前行った「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」で、東京オリンピック・パラリンピック競技大会において使用されるメダルを、リサイクルによって小型家電から集めた金属で製作するプロジェクトで話題となりした。果たして都市鉱山とは何なのでしょうか。
使用済みの小型家電は、金や銀、銅等の貴金属やレアメタルが含まれていることから、都市にある鉱山という意味で「都市鉱山」と呼ばれます。日本では1年間に約65万tの小型家電が廃棄されていますが、その中にはなんと844億円分もの貴重な金属が含まれていると言われています。
都市鉱山はリサイクルによって回収されるため、森林の伐採や地下水脈の汚染を引き起こす可能性のある鉱山の採掘と違って、環境へ与える影響が少ないのです。また金属の含有率が非常に高いことが特長で、自然の金山から採られる金鉱石には1tあたり約5gの金が含まれていますが、回収された携帯電話1t(約1万台)から回収できる金は約280gにもおよびます。
日本は資源のない国として知られていますが、都市鉱山に関しては有数の資源国と言えます。例えば金は6,800tが都市鉱山として国内に埋蔵されており、これは世界の金の埋蔵量4万2,000tのうち16%に匹敵します。銀も6万tで、世界の埋蔵量の23%を占めます。他にもインジウム16%、スズ11%、タンタル10%と、世界埋蔵量の一割を超える金属が多数あることが分かっています。天然資源国の資源埋蔵量と日本の都市鉱山を比較すれば、金、銀、鉛、インジウムは、日本がなんと世界最大の資源国となり、銅は世界2位、白金、タンタルは3位という資源国に位置付けられるのです。
そのため、都市鉱山をリサイクルして資源にすることは、資源不足という日本の課題を解決する一つの手段となります。
3. アサヒホールディングスの概要
アサヒHDは、貴金属のリサイクルを行う貴金属事業と、廃棄物の無害化等を行う環境保全事業の二つの事業を行う企業です。貴金属事業が売上の8割を占めています。
アサヒHDの貴金属事業は、検品から分離、製品化まで、一貫して行うことが強みとなります。
アサヒHDの業績は、売上高は過去6年間微増傾向であり、直近では営業利益や経常利益が増えております。後述する金の価格の上昇が利益の上昇に寄与していると言えます。
4. 松田産業の概要
一方、松田産業は地球資源を「活かす」貴金属関連事業、地球環境を「守る」環境関連事業、食資源を地球規模で「提供する」食品関連事業を展開する企業です。三つの事業のそれぞれが、独立採算を追求しているうえに異種混成型の事業形態がお互いに補充し合うことで、安定性と成長性のある企業づくりを実現しています。
アサヒHDと異なる点は、都市鉱山に関係する貴金属関連事業が約6割であるということです。残りの4割は、水産品、農産品、畜産品等の食品加工原材料の販売及びその運搬を行う食品関連事業となります。
松田産業の業績は、売上高はここ三年横ばいの一方で、売上総利益を中心とした利益が近年伸びております。しかし、近年は貴金属関連事業が好調なものの、食品関連事業の運送費及び保管料(販管費)の増加に頭を悩ませているようです。
5. 二社の外部環境
この二社の共通点として、貴金属の事業が金等の資源相場に業績が左右されるということです。昨今の新型コロナウイルスの感染拡大もあり、金は「安全資産」としての側面からも買われやすくなっています。金相場と連動する金上場投資信託の株価は20,000円を超え、過去最高値をマークしています、また、FRBなど世界の主要中銀の緩和的な金融政策の継続もあるため、金利のつかない金への投資意欲は今後さらに高まる可能性があります。
そのため、都市鉱山より資源をリサイクルするアサヒHDと松田産業の業績は、今後も伸びていくと推測されます。
5. 松田産業よりアサヒHDを推奨する理由
私は、二つの理由により松田産業よりアサヒHDの株式を推奨します。
まず一つ目は、貴金属に関連する事業の売上に占める割合が松田産業よりアサヒHDの方が多いからです。今後も貴金属の価格と上昇すると見られるため、アサヒHDの方がその恩恵にとよりあずかれると考えてよいでしょう。また、松田産業の食品関連事業は水産物の水揚げや世界情勢に左右されるため、利益率の割にはリスクが高いのが気がかりです。
二つ目は、株主還元です。アサヒHDの配当額は一株当たり140円と発表されており、これは2020年8月現在の株価で考えると配当利回りが4%を優に超えます。松田産業は、株主優待のクオカード2,000円を考慮しても総配当利回りが4%を超えません。
以上二つの理由により、松田産業よりアサヒHDの株式を推奨するのです。
6. まとめ
結論として、新型コロナウイルスの流行は、金が「安全資産」としての側面から買われやすくなる要因となります。そのため、都市鉱山より資源をリサイクルするアサヒHDと松田産業の業績は、今後も伸びていくと推測されます。また、松田産業よりアサヒHDの株式を推奨する理由は、貴金属に関連する事業の売上に占める割合が松田産業よりアサヒHDの方が多いことと、株主還元の違いです。
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