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1. はじめに
本レポートは、新時代の介護の在り方を管理者の考えを元にまとめたものであります。結論として管理者は、「地域循環型介護・医療構想」を実行に移すことにより、国に依存している現在の介護・医療制度を変え、利用者および地域住民、納税者にとって理想の社会を作れると考えています。
2. 介護業界の概要と動向
厚生労働省は、介護・高齢者福祉事業の取り組みについて、「高齢者が、介護が必要になっても、住み慣れた地域や住まいで尊厳ある自立した生活を送ることができるよう、質の高い保健医療・福祉サービスの確保、将来にわたって安定した介護保険制度の確立などに取り組んでいます。」としています。しかし、事業を支えている介護保険財政は厳しい現状であります。介護保険制度の介護費用は初年度3.6兆円であったが、制度の普及と高齢化の進展により、直近の19年度には11.7兆円 と3.3倍に膨らんでいます。
政府の推計 によると、40年度の介護費の対GDP比は3.3%と、18年度の1.9%に比べ、1.7倍となる見通しです。この伸び率は医療費の伸び率より大きく、給付の見直しや抑制等の対策が望まれる一方で、急激な制度改革は利用者の負担増を強い、大きな反発を生むとみられます。こういった現状を踏まえ、安倍晋三政権は19年9月に「全世代型社会保障検討会議 」を発足させ、介護保険の給付と負担の見直しを含め、20年の法改正に向け議論を加速させています。今後、中重度者や認知症者向けの介護等必要なサービスを維持、強化しつつ、それ以外の部分を適宜見直していくという流れになると著者は予測すします。
介護保険財政が厳しい一方で、介護施設の顧客となる認知症患者は増加傾向です。「団塊の世代」の全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年に、認知症の高齢者が約700万人に達すると厚生労働省は推計しています。軽度認知障害の人まで含めると1,000万人を超えるとみられ、この数値は高齢者の3人に1人となる。今後、介護業界の市場規模は増え続けていくと予想されます。
また、他業界と同様に、介護業界では介護職員の採用が進まず、人手不足が顕在化しています。厚生労働省の試算 によると、2025年度に必要となる介護人材数が約245万人である一方で、17年度の従事者が約187万人であるため、58万人もの人材不足の発生は見込まれています。しかし、介護分野の有効求人倍率が2018年6月時点で3.72倍 と、需要が供給に全く追い付いていない状況は続いています。これは、介護業界で働く職員の待遇が悪い点や、体力的に厳しいという点が一因であると見られます。加えて、採用難による人手不足に伴い、高いコストがかかる紹介、派遣業者の需要が増加しており、介護の中小、零細事業者の経営は圧迫されています。一方で大手事業者を中心に介護職員の給与が上がっている傾向にあり、大手と中小、零細事業者間の格差が開き、事業者の淘汰は進んでいくと見られます。
その他大きな動向としては、15年度の介護保険法改正により、要支援1と2の人に対する訪問介護が企業保険の対象から自治体の事業に切り替えられたことに加え、20年度に予定されている介護保険法改正で保険から切り離される案が出されていることです。このような背景から、訪問介護の事業者は大幅に減少していくと見られます。
介護事業者の面白い取り組み事例としては二つあり、一つ目にミライロプロジェクトのデイサービス事業 が挙げられます。デイサービスの施設を単身用賃貸マンションに併設したことで、デイサービスの赤字をマンションの黒字で補うことが可能となりました。デイサービス事業で利益確保を最優先しないことで、職場環境が改善し、スタッフの定着率および質は上がりました。結果として、口コミで良い評判が広まり、デイサービス事業の売上は向上している。加えて、訪問看護事業も立ち上げ、マンションの住人にサービスを提供することで、ミライロプロジェクトは全事業で利益がでる仕組みを作っています。
二つ目の事例として、シルバーウッドの稼ぐ高齢者住宅 が挙げられます。サービス付き高齢者向け住宅にレストランを併設し、そこで希望する入居者が店員として働いているのです。高齢者に対し社会とのつながりや役割を提供することで、高齢者の暮らしを豊かにすると共に、稼げる施設として持続的な事業運営が可能となります。
以上より、需要の増大により介護業界の市場は拡大していく一方で、介護業界をとりまく環境が厳しいため、時代に適した必要な介護の在り方を論じる必要があります。
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