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目次
1. 本記事の目的
昨今、民間病院や効率病院の経営は苦しい状況にあります。最近ではコロナウイルスの発生により普段通っている患者が減り、収益が大幅に減少しているとの情報を聞きます。
さて、病院の収益構造はどうなっているのでしょうか。今回は細かいところの説明は行わず、概要を説明したいと思います。
2. 病院の状況
昨今、病院や診療所、歯科医院を中心とした医療機関の倒産が相次いでいます。帝国データバンクは、2018年の医療機関の倒産件数(負債1,000万円以上の法的整理)が40件となり、2010年の41件以来、8年ぶりに40件に達したと発表しました。2019年も引き続き病院と診療所の倒産は高水準で推移し、2009年の52件、2007年の48件に次ぐ過去3番目の水準となる45件に達しました。倒産の主因は、来院患者数の減少などによる「収入減少」が最も多く、以下、経営者の病気・死亡、人材の不足と続きます。
公立病院の経営も赤字の深刻化が進んでおり、苦しい状況となっております。内閣府政策統括官のレポートによると、2015 年度における公立病院の経常収益総額は4兆108億円、経常費用は4兆656億円であり、経常収支比率は 98.7%となっています。要するに、経常収支比率が100%を切るということは、国庫や都道府県からの補助金の収益があるにも関わらず費用を賄えない、いわゆる赤字の状態にあります。
また、補助金等の収益を考慮しない場合の経営指標である医業収支は、医業費用が医業収益を恒常的に上回る医業収支が100%以下の状態が続いており、2015 年度の数値が 89.5%となっています。補助金を考慮しない場合の経営はさらに苦しいこととなっているのです。
3. 一般企業と異なる点
赤字幅を減少させるためには、収益の上昇や費用の減少を図る施策が必要です。そのため、収益構造を把握することは病院の将来戦略を考える上で非常に重要です。
公立病院には、一般病院と比較し大きく異なる点が二つあります。一つ目は、住民の健康を守るという一般企業と大きく異なる独特の使命が病院にあることです。例えば採算性の悪い診療科から撤退する戦略を採用する際に、地域住民の反発が起きる可能性があります。
二つ目は、公立病院に基本的に営利を目的とすることができないという制約が存在することです。そのため、公立病院には、地域住民の理解を得つつ収益と費用をほぼ同額にし、安定した財務基盤を築く戦略を採用する必要があります。
4. 病院の収入構造
病院の収益構造を、収入と費用(支出)の面から説明します。まず、収入は、その他を除き三つに大別されます。まず一つ目は、入院収入です。これは病床数と稼働率、単価を掛け合わせて算出されます。一般的に安定した稼働率は80%程度と言われており、あまりにも稼働率が高いと収入が減ることとなります。二つ目は、外来収入す。これは、診療科別の患者数と単価を掛け合わせて算出されます。三つ目は室料差額収益等の収入です。これは、別名差額ベッド収益等ともいわれており、ここで付加価値を付ける病院も少なくありません。某私立病院では、最上階に芸能人御用達の部屋があり、相当額の収益が発生するようです。
5.病院の費用構造
次に費用は、四つに大別されます。まず一つ目は、材料費です。これは、薬剤費および材料費に大別される。発注ロットを大きくすることや、ジェネリックを使う等で適正化できる可能性もありますが、あまりにも材料費をケチり過ぎると高度な投薬ができなくなり、収入に響いてきます。
二つ目は、人件費です。これは、医者給与と看護師給与、その他職員給与に分けることができます。一般的に病院の人件費がは非常に高く、以下に効率的に働いてもらう環境を作るかが必要となります。三つ目は減価償却費およびリースです。これは、建物や医療機器によるものです。建物の建て替え後や高額な医療機器の購入後数年間は減価償却費が多大となるため、病院の損益計算書を分析する際に一定の考慮が必要です。特に最近はダヴィンチといった一億円を超すような高度な医療機器の導入があるため、注意が必要です。
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